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ヒモト設備の消火日誌~変遷~

皆さんこんにちは!

ヒモト設備工業株式会社、更新担当の中西です。

 

~“変遷”~

1| “火を消す” から “事業を止めない” へ

かつて消火設備のミッションは延焼を抑えることが中心でした。
いまは「人命+財産+事業継続(BCP)」を同時に守る総合インフラへ。
キーワードは 標準化/耐震・BCP/多方式化/見える化/サステナブル です。


2|〜1970年代:基盤整備と標準化の時代

  • 設備の主役:屋内外消火栓、湿式スプリンクラー(常時満水)、泡消火(油火災)、二酸化炭素などのガス系。

  • 設計・施工:黒鋼管のねじ・溶接が中心。手作業の現場合わせが多く、図面は2Dが主流。

  • 法制度:火災事例の教訓を受け、用途・延べ面積・高さなどに応じた設置義務や性能要件が整備・普及。

  • 課題:腐食・ねじ部漏れ・水撃(ウォーターハンマー)・誤作動への対策は道半ば。


3|1980〜1990年代:耐震・品質・方式の多様化

  • 耐震・支持:吊り金具、耐震ブレース、可とう継手の普及で地震時の座屈・落下リスクに対応。

  • 機械式継手(グルーブ):大口径の現場溶接を減らし、工期短縮と均一品質を実現。

  • 方式の拡張:湿式に加え乾式・予作動・二重作動・デリュージが整備。用途と被害最小化のバランス設計へ。

  • 検知・警報:定温・差動→煙・炎感知、アドレス(個別)化でどこが鳴ったかが即判別。

  • メンテ文化:定期点検・性能試験の標準化。写真付き台帳・試験結果の保管が一般化。


4|2000年代:プレハブ化・BIMの萌芽・ガス系の再編

  • プレハブ/スプール化:工場で組み立て→現場は吊り・接続中心に。安全・品質・スピードが向上。

  • BIM/3D:干渉チェック・重量計算・支持金具配置を事前検証。設備間の“取り合い”を削減。

  • ガス系の見直し:ハロン代替(不活性ガス・消火薬液)など、環境負荷と人安全を両立する選択へ。

  • 水ミスト:放水量を抑えつつ冷却・不活性化を狙う微細化技術が台頭(美術館・病院・機械室など)。


5|2010年代:IoT監視・BCP設計・多用途最適化

  • IoT/常時監視:圧力・弁状態・警報ログを遠隔で可視化。早期異常検知と巡回の最適化。

  • BCPの内蔵:系統分割・バイパス・ポンプ冗長・非常電源で**「止めない計画」**が標準に。

  • 用途別最適化:データセンター(誤放水最小の方式)、物流倉庫(高積み・冷凍併設)、医療施設(感染対策と両立)など。

  • 非火気施工:稼働中改修が増え、グルーブ/プレス継手で夜間・短時間施工が主流化。


6|2020年代:サステナブル・レジリエンス・DXの本格化

  • 省エネ/LCC視点:ポンプの高効率化、電動化、10〜20年の維持費で比較する提案へ。

  • サステナブル:薬剤・ガスの環境影響に配慮、水害・台風・猛暑まで含むマルチハザード設計

  • 遠隔点検×データ蓄積:圧力・漏えい・弁固着の予兆をダッシュボードで。帳票も電子化。

  • 新リスク対応:リチウムイオン電池、EV設備、超高層・木造中大規模建築など、火災性状に応じた組合せ設計が深化。


7|“技術の肝”の進化(現場の勘所)🛠️

  • 雨仕舞いならぬ“水仕舞い”:配管内の腐食・デッドレッグ削減、乾式は酸素管理や窒素置換で長寿命化。

  • 水撃・誤作動:立上がり緩和、エアベント、感知・バルブのフェイルセーフ。

  • 検知の高度化:アスピレーション(吸引式)・映像解析・マルチセンサーで早期・誤報減を両立。

  • 耐震・可とう:支持間隔・ブレース角・貫通部の耐火・防露まで“施工図で確定”が品質を決める。


8|ビジネスモデルの変遷:工事から“運用伴走”へ 💼

昔:設置=納品
今:設計→施工→検査→監視→点検→更新までを**SLA(サービス水準)**で提供。

  • 可視化パック:弁・計装点リスト、圧力・警報の月次レポート、改善提案。

  • LCC提示:漏えい率▲、誤作動率▼、緊急出動時間▼を費用対効果で説明。

  • 成果連動:誤作動・アラーム対応・点検達成率などを契約指標化。


9|“選ばれる会社”の提案テンプレ(そのまま使える)📐

  1. 3プラン:ベーシック(更新)/スタンダード(ねじレス・省施工)/プレミア(IoT監視+BCP冗長)。

  2. BIM干渉チェック画像支持・耐震金具表を見積段階で添付。

  3. 運用図:系統図・弁位置・点検動線・遠隔監視点を1枚に。

  4. 10年LCC表:ポンプ・弁・感知の点検更新費、漏えい率改善による電力・工数削減を数値化。

  5. 計画停止最小化:分割切替・仮設バイパス・夜間施工の工程ガント。


10|現場品質チェックリスト(抜粋)✅

共通

  • 貫通部の耐火処理、吊りピッチ、ブレース角、保温・防露

  • 耐圧・通水/作動試験、アラーム連動、写真台帳必須カット(支持・継手・勾配・弁・計装)
    スプリンクラー

  • 末端試験弁の流量・警報、ヘッド配置(障害物・天井高さ)、乾式のエア圧監視
    消火栓・泡

  • 吐出量・到達距離、混合比・液剤の棚卸し管理
    ガス・ミスト

  • 室気密・放出設計、ディスチャージ試験の手順と安全境界


11|“やりがい”はこう変わった 🌟

  • 裏方事業継続のキープレイヤー:点検レポート1枚が会社の安心を支える。

  • 配管を敷く最適解を設計する:用途・被害最小・環境・コストを同時に解く“パズルの妙”。

  • 完工の達成感データで続く手応え:漏えい率▲2%、アラーム誤作動1/3など“数字が証明”。

  • 個の技チームとDX:BIM・遠隔監視・SOPで若手も早く一人前に育つ。


12|100秒ストーリー(物流倉庫の夜)

高積み倉庫で夜間改修。直列幹線の末端圧が不足し、ヒヤリが続いていた。
リング化+径アップ+可とう支持をBIMで事前検討。
切替は仮設バイパスで稼働を止めずに実施。
月次ダッシュボードでは末端圧安定・誤作動ゼロ、保険料査定も改善。

“見えない配管の最適化”が、倉庫の朝と現場の誇りを変えた。


13|明日からできるミニ改善 ✅

  • 既存図に弁番号・座標・天井高さを追記(点検時間▼)。

  • 末端試験弁の定点ログを月1で取得(傾向管理)。

  • 乾式区画の酸素管理/窒素置換の可否を検討。

  • 写真台帳の必須カット5点(支持・継手・貫通・勾配・弁)をテンプレ化。

  • 見積に3プラン+10年LCCを標準添付(価格競争を回避)。


まとめ ✨

消火設備業は、「設置」から「運用までの価値提供」へと進化しました。
耐震・BCP・多方式・DX・サステナブルを織り込んだ設計と、見える化された保全が選ばれる時代。
小さな一歩――弁座標リストの整備と末端試験ログの定点化
――から、
“止めない・漏らさない・劣化させない”現場づくりが始まります🧯🚀

 

 


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